破戒 島崎藤村 新潮文庫

破戒 (新潮文庫)

破戒 (新潮文庫)

瀬川丑松は、師範学校を出て長野飯山にある小学校で教員をしている。近頃穢多であることを決っして明かすなという父の言葉を思い出して丑松が考えこむことが多いのを師範学校同級の銀之助は心配している。年老いた風間敬之進という教員が学校を退職する。丑松の下宿である寺に預けられているお志保は風間と死んだ先妻の娘だ。
父が死に、丑松は帰省する。帰省途上、日ごろから共感している論客、猪子蓮太郎に出会う。猪子も丑松と同じく穢多だが、そのことを公言していた。蓮太郎は推薦する代議士候補市村と共に遊説中だった。父の葬式を終えて学校に戻る途中、丑松は市村の対立候補候補である高柳が、穢多の出身で今は資産家の娘と結婚して飯山に戻るのに出会う。この嫁は丑松の出自を知っていたとみえ、高柳の口から「小学校の教員に穢多出身の者がいる」といううわさがじわじわと広まっていく。市村と猪子は飯山で演説会を開くが猪子は高柳の手先に殺されてしまう。猪子の死に直面して丑松は出自を隠そう隠そうとして偽りの人生を歩むことのむなしさを思い、身分を告白する決心をする。一方、穢多であるなら丑松を学校から追放しようという動きはいよいよ決定的になる。丑松はついに父の戒めを破り、子ども達に自分が身分を隠していたことをわびて、学校を去る。一方志保は寺に居られなくなって家に戻っているが、敬之進は死の床にあり、生活は困窮していた。銀之助は丑松と志保のために周囲に働きかける。丑松は猪子の遺体を送って猪子の未亡人と共に東京へ行き、いずれはブラジルに渡ろうかという話になる。未亡人はいずれ志保を東京に引き取ってわが子同然に育てることを約束する。丑松は子ども達や銀之助、志保に見送られて雪の中橇で飯山を出る。