蟹工船 小林多喜二 新潮文庫

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

方言や漁業用語が出てきて、読みにくい。プロレタリア文学の典型として文学史で学ぶことが多い。
北海道のロシアとの領海近辺で、蟹を加工する船と蟹漁をする船とが船団を組んで活動している。東京の本社は多額の儲けに沸き、社長は代議士に立候補するらしい。
船員、工員、漁師それぞれが寒く厳しい環境の中少ない食糧で長期にわたって働かされている。仲間の船が荒天で沈むが、船長は自分の漁獲高確保が先決で救助に行かない。仕事がきつすぎて隠れる者は容赦なく処罰される。労働者達は船長や監督に人間として扱われていないと感じる。荒天を押して出航させた漁船が難破し、ロシア人にプロレタリア闘争をしようと言われて帰還する。駆逐艦が時々やってきては宴会をやって帰っていく。ロシア領海が近いので蟹工船を警護しているのだ。
試みに漁夫や船員たちはサボタージュをこころみる。おそるおそるだが、全員でのろのろ仕事をし、監督の浅川が何をしても無視してみるとある程度の効果がでる。
ある日一人の漁夫が、かっけで治療もうけられぬまま放置されて死ぬ。水葬は乗組員の心に火をつける。サボタージュをしてみるが、監督がピストルを持ち出して威嚇するために自然消滅となる。荒天を突いての出航を命じられ自分達の命を軽んじる監督の考えを再確認したことで、中心となる数名がよびかけていよいよ本格的にストライキ始まる。団体交渉にでかけて監督がピストルを撃てないのを見て労働者達は力を得るが、駆逐艦がやってきて中心となったものたちを連行し、ストライキは自然消滅となってしまう。残された労働者たちは、誰かが中心となってやるのではなく、自分達全員が各自の相違としてストライキをやらなければだめだ、たとえ中心となる者がいたとしても、それをやすやすと資本家側にわかるようにしてはだめだ、と悟って次の本格的なストライキを構える。