それから 夏目漱石 新潮文庫

それから (新潮文庫)

それから (新潮文庫)

代助は働かない。大学を出て、英語の本を読んだり、散歩をしたりする生活である。周囲の人々は皆皮肉を込めて働かないのかと言うが、父親と兄のお金で、ばあやと書生を置いて一軒家で生活している。兄嫁が何かと気遣って、代助が不自由なく生活できるよう心をくばってくれている。
親友平岡とその妻三千代が田舎から東京に戻ってくる。銀行勤めをしていた平岡が人の失敗を引き受けて借金を背負って、失業しての上京だ。三千代は心臓が悪い。そもそも三千代は、代助と平岡の共通の友人であった男性の妹だ。共通の友人がチフスで死亡した後、友人と同居していた三千代と平岡の仲を取り持ったのは代助だった。
上京してきた平岡は、学生時代とはすっかり変わっており、代助から見ると純粋さを失って俗事にまぎれており、三千代を大事にしていないように見える。心臓の悪い三千代を心配しているうちに、代助は自分が三千代を愛していることに気づく。一方事業がうまくいかない代助の父は、資産家の娘を嫁にもらうよう代助にすすめる。代助は断りたいと思いつつ、いままでずっとそうであったように、優柔不断な態度を示し続けるが、悩みながらもついに自分の三千代に対する気持ちを確信する。三千代に告白し、父には資産家の娘との縁談を断る。三千代の同意をえて、平岡に三千代をゆずってくれと告白する。そのとき三千代は大きく体調をくずしていた。平岡に直談判し、「三千代は今体調を大きく崩しているから、体調が回復したら譲る」という約束を取り付けて待っていると、ある日兄が訪ねてくる。平岡が代助の行状を父に訴え、父が代助を勘当すると言っていることを伝える。代助はそれで結構だと答え、やっと仕事を探そうと決心する。代助はやっと父と兄の保護下から自立するのだった。