1984年 ジョージ・オーウェル ハヤカワ文庫

1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)

1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)

内容は興味深いが、いかんせん翻訳が(難しかったであろうが、それにしても)読みにくい日本語となっている。
生活の全てを党が支配する1984年のロンドンが舞台である。主人公ウィンストンは真理省に勤めている。新聞雑誌などに記載されている内容を過去にさかのぼって実際の状況にあうように訂正するのが仕事だ。こうすると最新の党の発表にあわせて過去を変えてしまうので、実際に過去にどのようなことがおこったのか人々は記憶できなくなり、何が本当の過去かがわからなくなっている。全家庭にテレスクリーンという端末があり、党からの情報を常時提供すると共に国民の行動を常時監視している。人々の思想を管理するために党が言葉までを無理に変えてしまう。表現する言葉がなければ、その思想や行動も概念として存在しないからだ。あらゆる品物が常に不足していて、食べ物飲み物も着る物もなかなか思うように手に入らない。常に外国と戦争をしている。
ウィンストンはある日、日記を書き始める。日記を書くことは個人で歴史を記録することになるため固く禁じられていたので、テレスクリーンから見えない位置に座って書く。ジューリアという女性から愛していると告白され、党のルールに違反してつきあうようになる。
二人はオブライエンという男に声をかけられる。党に反対する勢力かと思って協力を約束するが実はオブライエンは思想警察の一員だった。隠していた日記も二人の隠密の行動もすべて当局に管理されていたのだった。二人は別々に拘束され罰を受け、思想教育を受ける。釈放されたウィンストンとジュリアは偶然再会するが、二人とも変わり果てていた。それまで愛し合っていると思っていたのに、収監されている間に自分の身代わりになってくれるなら誰でもいいから傷ついて欲しいと願うようになっていた。絶対に改造されまいと思っていた二人も結局党に支配されていたのだった。党は戦争に勝利したと発表する。